看護師の職域の広さについて

はじめに
看護師の職域は多岐に渡るため、その労働先としての選択肢は豊かで働く場は非常に幅広く、医療・福祉・教育など様々な分野において多方面に活躍しています。昔から女性が単身でも比較的身を立てやすいと言われる他にも、何歳からでも取得に向けチャレンジしやすい医療資格として有名でもあるのが看護師です。
ところで、看護師の働く場も多様であることで、将来的なキャリアプランも多彩なものとなっています。今回の記事では代表的な職場と、それぞれの現場での仕事内容の概要をまとめてみました。

主な職場と仕事内容
1. 病院
- 病棟看護師:入院患者のケア、医療処置、清潔ケアや食事介助、リハビリ支援などを行います。
- 外来看護師:診察補助、医療処置、簡便な事務作業などを担当します。
現在、従事先として病院を選択した者の割合は稼働中の看護師全体の73.9%と、全属性中最も多くなっています。
2. クリニック(診療所)
外来診療が中心で、診察準備や片付け、事務作業、美容関連業務なども含まれます。少人数体制であることが殆どのため幅広い役割が求められます。
ですが、仕事内容が特定の診療科に偏ることから、ベースとなる基本的で広範な新人教育が実施できないなどの課題もあり、新卒者の就職先には不向きであるという現状があります。働き手としての即戦力となる当該診療科の経験者を求めていることから、殆どの事業所では新卒者よりも既卒者を歓迎する傾向にあります。
3. 訪問看護ステーション
患者宅を訪問し、医療処置や日常生活支援を提供します。患者本人のみならず、患者を取り巻く環境と家族をも看護の対象として捉え、自立支援や家族への生活指導も重要な役割となります。
物品も時間も限られた環境である一般家庭での医療支援になることから、従来は新卒者ではなく、他の現場で医療知識や経験を積んだ既卒者のみを雇い入れている事業所が殆どでしたが、昨今では少子高齢化や過疎化の進展で、訪問看護への全体的なニーズ拡大に伴い、新卒者を迎え入れる現場も漸増しつつあります。
4. 介護施設
高齢者の生活支援や医療ケアを行い、リハビリや日常的な健康管理に携わります。老年期にある入居者との密接な関わりが出来ることが特徴です。少子高齢化の進展に伴い、老年期にある対象者に関わる看護師の需要は更に高まることが予想されます。
5. 保育園・幼稚園
子どもの健康管理や病気予防、保育士との連携が主な業務です。乳幼児へのケアが中心となりますが、保育士と異なる点は教育面ではなく医療的なアプローチを中心に携わることです。
子供の怪我や窒息、食物アレルギーでのアナフィラキシーショックに対する初期対応など、保育事故発生の際には医療的な処置を真っ先に実施する必要があるため、小児科での勤務経験者が優先して採用されることが多いもの、中には未経験者を採用する事業所も存在します。
6. 障害者福祉施設
知的・身体・精神障害を持つ方々への支援を行い、生活の質向上を目指します。
7. 保健所・保健センター
地域住民への健康相談、疾病予防活動、母子保健指導などを担当します。保健所や保健センターへの勤務は必ずしも保健師資格を必要とするポジションばかりではありません。
8. 学校・看護職養成所
看護大学や専門学校で教員として働き、次世代の看護師達の教育に携わります。また、大学に限られてしまいますが、看護系の学問の研究者としてアカデミアの道に進む選択肢も開かれています。
ただし、看護専門学校を卒業してから研究者の道を選択しようとする場合には、大学に編入するなどして、前提となる学士の資格を得ることが必要です。
9. 一般企業
産業看護師として、企業・団体の被雇用者である従業員の健康管理やメンタルヘルス対策を行います。産業看護師と保健師は混同されがちですが別の職種です。
10. その他、上記に当てはまらない特殊な職場
- ツアーナース(旅行中の添乗・健康管理要員)
- フライトナース(山岳救助ヘリやドクター救急ヘリに同乗する)
- テーマパークやイベント(コンサートやライブ等)付設の救護室
- 献血ルーム
- 健康診断カー
- 検査医療機関(出生前検査、STDsなど特殊で集中的な検査)
- 子どものための社会的養護関連施設(乳児院や児童養護施設)
- 矯正施設(少年院、刑務所など)
- 司法監察医療の現場(鑑定留置された対象者を担当)
- 自衛隊や海上保安庁といった特殊な部隊関連の医療チーム
看護師の中には珍しい現場でその専門性を生かす者も少なくありません。或いは日本を飛び出して、国際機関やNGOでの医療支援など、他文化圏・他言語圏での対象者支援に注力することも可能な資格が看護師です。能力と経験、希望次第では多様な環境で働く機会が得られるでしょう。
上位資格とさらなるキャリア
また、以下は働く場としての分類ではありませんが、看護師として病院に勤務後も職場の理解やリソースを得てそのキャリアを伸長し、下記の上位資格を取得した上で更に活躍することも可能です。
1. 認定看護師
特定分野(緩和ケア・感染管理など幾つかの分野に分かれており、自分が専門性を高めたい分野で資格を取得することになります)の専門知識を活かして、一般の看護師よりも水準の高いケアを提供できるようになります。
2. 専門看護師
認定看護師よりも更に高度な資格で実践、相談、調整、倫理調整、教育、研究の6つの役割を担います。取得には大学院での2年間の学業修了が必要です。患者だけでなく看護チーム全体への教育も担うことができます。
まとめ
このように、看護師は病院だけでなく、地域社会や教育現場でも重要な役割を果たしています。働く場所によって仕事内容が異なるため、自分の興味やライフスタイルに合わせたキャリア選択が可能なところも看護師の働き方の魅力です。
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