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【論説】欧州における医師の免許又は資格と登録のシステム、日本の医師免許との違いについて

欧州における医師の資格又は免許と登録に関するシステム、日本の医師免許との違いについて、以下にて詳しく論じます。

はじめに、欧州の多くの国において、医師免許は単に医療行為を行う資格を示すだけでなく、その国や地域での開業権をも含むことがあります。つまり、医師免許を取得すると、その国で医療機関を開業し、患者に対して医療サービスを提供する権利を持つことになります。すなわち、現地での開業権が無いにも関わらず医学部卒業と同時に医師免許を取得しているとした表現は、厳密には欧州では間違いである場合があります。ここでいう医師免許を取得するためにはクリニックを開設する物件を取得もしくは賃貸借契約に基づき、当地の弁護士や税理士、公証人との各種手続きにより、国家や地域からの許認可により医師免許を取得するのが通常です。ただし、国によって具体的な規則や条件は異なるため、医学部卒業後に医師免許を取得するためには、各国の関連法令や手続きを必ず確認することが重要です。また、特定の資格や研修を追加で必要とする場合もありますので、事前に情報収集を行うことをお勧めします。

また、医師免許又は資格の取得と登録プロセスは、医療専門職の質を維持し、患者の安全を確保するために必要不可欠な要素ですが、その内容や実施方法において欧州諸国においてもそれぞれの国によって異なる点が存在します。つまり、欧州諸国との比較でさえ医師免許の実質的意味が異なっており、ましてや日本の医師免許とは法的権限を含めれば、まったく同等であるとは限りません。また、一部の国では医師資格(Qualification)と表現されているものが、実質的に我が国における医師免許と同等であることもあります。

欧州における医師の免許又は資格と登録

医師免許(License)若しくは医師資格(Qualification)

  • 権利の付与: 欧州各国において、医師免許は医療行為を行う権利を与えるものであり、医師がその国で診療を行うために必須のものです。各国の保健当局から認可された教育プログラムを修了し、所定の試験に合格する必要があります。例えば、ルーマニアでは、卒業後にインターン(トレーニング期間)を終了しなければライセンスが発行されません。

医師登録

  • データベース管理: 医師登録は、医師が医療行為を行う権利を保持するための手続きであり、登録簿にその情報が記載されます。各国には医師登録の管理機関があり、医師が最低限の能力基準を満たしているかどうかを確認します。この登録プロセスは、国によって異なる運用がされることがあります。例えば、ハンガリーやベルギーでは、医学の学位を取得後に追加の資格認証が求められます。

日本の医師免許との違い

日本の医師免許は、国家試験に合格することによって得られるもので、一定の教育(医学の学位取得)と実習を経て取得するため、欧州の制度と近しい点もありますが、いくつかの重要な違いがあります。

医師免許の単一性

  • 医師免許: 日本では医師免許が一度取得されると、生涯にわたって有効ですが、定期的な更新や再登録はありません。これに対して、欧州の多くの国では、登録の更新が必要であり、継続教育や能力の確認を通じて医師のスキルを維持し続けることが求められます(例:UKや日本でも一部医療職での継続教育は義務付けられていますが、医師自体は免許継続には直接関与しません)。

登録制度の有無

  • 登録制度: 日本では医師免許を取得と同時に「医師」という資格が与えられ、その後の欧州諸国のような複雑な登録手続きが特に必要ないため、実質的に医師としての資格は常に保持されています。この医師資格という称号について、同等の意味を持つ代表的な国家として、例えば米国、イスラエル、ウクライナ(英国: 2025年度以降UKMLE)が挙げられます。こうした国では、卒業時に実施される州の試験に合格することで、医学部を卒業と同時に医師資格が付与されます。医師資格はその後のインターンシップ参加の必須条件となっており、このレジデンス期間終了後に専門医試験[米国であればStep3]に合格すれば専門医を取得することになります。

結論

欧州における医師免許又は医師資格と登録は、医療従事者の資質を維持するために重要な手続きであり、それぞれの国の制度には様々な違いがあります。日本は、医師免許が一度取得すれば原則として生涯有効であるため、継続的な評価や更新を重視する欧州のシステムと対照的です。このような違いは、医療の質、患者の安全性、また医師の責任感にも影響を与え、医療制度全体の効率性に寄与しています。医師の自由な移動を推進するためにも、これらのシステムの透明性や整備は重要です。

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